医療法人社団プラタナス 青葉アーバンクリニック コールセンターの“ワンクッション”が、質の高い医療提供に直結している
【医療機関名】医療法人社団プラタナス 青葉アーバンクリニック
【所在地】〒225-0011 神奈川県横浜市青葉区あざみ野2-29-1 ブランズシティあざみ野1階
【代表者】院長 長瀨健彦
【ホームページ】https://aoba-urban.jp/
医療法人社団プラタナスは、チーム医療を通じて「患者視点の医療サービス」の実現を目指して設立された医療法人だ。専門性とプロフェッショナル精神を持ったスタッフがチームで診療に関わり、患者との心の通った コミュニケーションを通して、患者のQOLを一緒に考えて行く、というプロセスを大切にしている。 同法人では、2006年より訪問診療を開始し、世田谷区、横浜市を中心に4つのクリニックが機能強化型在宅療養診療所として地域に訪問診療を提供している。その中の「青葉アーバンクリニック」は、地域より訪問診療クリニック開設の要請があり開設した地域に密着したクリニックだ。今回は、青葉アーバンクリニックにおいて当直連携基盤を導入いただくことになった経緯や、今後のクリニックの展望などについて、居宅医療部部長の榊原氏と事務長の飯塚氏に話を伺った。
居宅医療部 部長・医師 榊原守(サカキバラマモル)
1971年、東京都台東区上野の下町生まれ。1996年、東海大学医学部卒業。東海大学付属病院内科研修後に循環器内科に所属。2003年同院医学研究科大学院卒業後、池上総合病院で臨床経験を積み、北海道大学病院循環器内科 医長を経て、2021年より医療法人社団プラタナス 青葉アーバンクリニック 居宅診療部長として、横浜市青葉区を中心とした居宅患者さまの訪問診療に従事している。患者さまFirstの視点で医療サービスを行い、患者さま・ご家族がご自宅で有意義な生活ができるよう尽力している。
事務長 飯塚以和夫(イイヅカイワオ)
1964年、新潟県新潟市生まれ。1987年、新潟大学経済学部卒業、2007年ビジネス・ブレークスルー大学大学院MBA、中小企業診断士。2008年株式会社メディヴァ入職、医療法人社団プラタナス事務長を兼務。メディヴァでは、自治体、医師会、医療機関、介護事業者等と組織を超えたチーム作りに取り組んでいる。プラタナスでは、青葉アーバンクリニック他神奈川県を中心に5拠点にて訪問診療を中心としたクリニックの運営を行っている。
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左:当直連携基盤・中尾、右:医療法人社団プラタナス・榊原部長
「患者視点の医療サービス」の提供のために、
担当医が24時間体制で対応し続けてきた
当直連携基盤・代表取締役 中尾(以下、中尾) :
本日はお時間をいただきありがとうございます。まずは、青葉アーバンクリニック様の特徴をお伺いしてもよろしいでしょうか。
青葉アーバンクリニック 居宅医療部 榊原部長(以下、榊原):
まず、医療法人社団プラタナスは、「患者視点の医療サービス」をコンセプトに設立された法人で、患者さんにとって最も望ましい医療やケアを継続的に一緒に考えていくプロセスを大切にしてきました。
青葉アーバンクリニックは、医療法人社団プラタナスが複数運営しているクリニックのひとつで、グループの中でも2015年にできた一番新しい院です。当院の特徴は、「訪問診療を中心に運営している」という点ですね。
中尾 :
私は数年前からプラタナス様のことを存じ上げていたのですが、各クリニックに複数の医師が在籍していながらも、輪番体制ではなくご自身の患者さんは主治医が24時間体制をとられているという点が特徴的だなと感じておりました。
青葉アーバンクリニック飯塚事務長(以下、飯塚)
そうですね。ただ、年々患者さんが増えていることで、医師1人あたりの担当患者数も増加していますし、コロナ禍になってからは終末期の方が増えてきたという背景もあり、よりきめ細かい対応が求められるようになってきました。
2024年からは「医師の働き方改革」も始まりますし、患者さんに不安を与えないような形で時間外対応による医師の負担を軽減できないかな…と考えていました。
中尾 :
実は、当直連携基盤のサービス立ち上げのきっかけのひとつにもなっているのが、プラタナス様の「クリニック間連携」なんです。
たしか4年ほど前、「松原アーバンクリニックさんが基軸となって、クリニック間で連携して24時間体制で患者さんを診ている」というお話を伺ったのですが、青葉アーバンクリニック様にはこの仕組みが適用されなかった背景をお聞かせいただけますか?
榊原:
当院は世田谷区内にある当直医の待機場所から距離が離れているため、当院の先生方から「来るのに1時間もかかってしまって は患者さんへの対応が後手に回ってしまう」という声がありました。
また、他のクリニックでは、クリニックの医師・看護師で時間外コールの輪番制をとり、臨時往診のみ当直医に依頼する体制としていますが、当院では当時の人員が十分でなく、また、働き方改革に対応できる勤務体制を目指していたので、輪番制という選択はしませんでした。
これらを前提条件として(法人の当直体制にこだわらず)「患者視点の医療サービス」を最優先に検討を進めていました。
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「精神的ケア」を含めた対応が任せられるかどうかが、
サービス導入の「肝」だった
中尾 :
青葉アーバンクリニック様が日頃患者さんに対して在宅医療サービスを提供する上で気をつけていることをお聞かせください。
榊原:
終末期の患者さんや緩和ケアの患者さんというのは、ある程度信頼関係ができていないと医療の提供が難しいんですよね。ただ単に「オピオイドをどれぐらい使った方が良いか」といった投薬の問題だけではなくて、精神的ケアも継続して行っている中で、例えば夜に相談をしたいという連絡があった時に、痛みの相談かもしれないけれども実はその裏に「精神的ケアもしてほしい」という思いもあったりするときもあるんです。
ですので、そういったケアも含めた対応を日中に限らず、24時間体制で提供できるかどうかは重要視していました。
中尾:
「精神的ケア」ができるかどうかが、当社のサービスを導入するにあたっての大きな懸念点のひとつだったのですね。
榊原:
そうですね。「当直連携基盤の先生方はちゃんとやってくれるのかな」という心配はたしかにありました。けれども、実際にお願いをするようになってから、その辺りをよく理解して、適切な対応をして下さっている先生方が多いことを実感しております。
とはいえ、どうしても主治医じゃないといけないという患者さんがいらっしゃった場合は、我々は今「モバカル」という電子カルテを使ってクリニック内や当直連携基盤さんとも患者情報を共有をしているので、カルテ内の「重要メモ」欄に「こちらの患者さんはどうしても主治医を希望されていますので、コールがあった場合は主治医にご連絡ください」というように記載をして個別対応をさせていただいています。

中尾:
オンコール時の対応を当社にお任せいただいたことで、どのような変化があったのでしょうか。
榊原:
今まではこの対応を主治医がすべての患者さんに対してやっていたところを、当直連携基盤の先生方にお願いできるようになったことで、我々も肉体的負担や精神的負担を軽くできたというのは非常に大きかったと感じています。
主治医制を長く経験していた医師の中には、24時間自分自身が対応するということを大切にしていらっしゃった方もいると思います。しかし、当直連携基盤の先生方も、患者さんへの精神的ケアをしっかりしてくださっているのを感じていますので、今は安心してお任せしております。
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カルテを読み込む準備時間があることで、
当直医師は充実した対応ができる
中尾 :
当社のサービスを導入いただくにあたって、一番の懸念点は今お話いただいた精神的ケアの部分であったり、普段の関係性を踏まえた当直対応ができるのか、といった点だったのでしょうか。
榊原:
そうですね。精神的ケアももちろんそうですし、今までの経過をちゃんと理解していただいた上で患者さんを対応してくださるかどうかが、懸念事項でした。
当直連携基盤さんの場合は、患者さんから連絡があると最初にコールセンターの方が受けてくださるじゃないですか。その後、チャットツールなどで当直の先生や診療アシスタントの方に連絡が来ると思うのですが、コールセンターの方が対応してくださっている間の時間が少しでもあることで、当直の先生方が先に患者さんのカルテを見たりできるんですよね。
そのワンクッションの時間があるというのは、患者さんや訪問看護師さんにとっては、主治医に直接つながるときと比べると待ち時間だと捉えられてしまうかもしれませんが、その後のケアをちゃんとしていただければ問題になりません。むしろ、しっかりカルテを確認して、適切な対応をして下さっているのだろうなと私は思っています。
中尾 :
なるほど。コールセンターは医師の負担を軽減するだけでなく、診療に万全の状態で臨む上での準備時間として捉えてくださっているのですね。
榊原 :
きっと、当直連携基盤の先生方もコールセンターの対応中の時間があることでとても助かっているのではないかと思いますよ。
もしも医師に直接電話がかかってきてしまうと、自分が当直だとわかってはいても夜間はどうしても眠いですし、真夜中にかかってきたときには寝ぼけてしまうことだって当然あると思うんですよ。
私自身もずっと当直を経験してきたのでよくわかるのですが、頭の整理ができていないときに誰でも最適な対応ができるかというと、難しいというのが正直なところだと思います。
そういった意味でも、ワンクッション挟んでいただけて、なおかつカルテを見た上でその後医師から看護師さんや患者さんに連絡をしていただけるという形であれば、双方精神的に安定した状態で話ができると思います。
中尾 :
今後当社のサービスに対して、ご要望やご意見がもしあれば、ぜひお聞かせください。
榊原:
当直連携基盤さんは対応してくださった往診や電話対応の情報を一覧にして共有してくださっています。現状だとカナ表記の患者名の一部が個人情報の兼ね合いで伏せられていると思うのですが、フルネーム表記して頂けたらいいなとは思っています。
似た名前の人がいた時にどちらなのかその場でぱっと見た時にわからないことがありまして。対応は特に土日が多いので、月曜日にそのシートを確認してどの患者さんなのかを突き合わせる業務が大変なんですよね。
中尾 :
早速今日から対応させていただきます!
クリニック様によっては、セキュリティがかかっているとはいえオンライン上に患者名が出るのを希望されないケースもあるため、お名前の一部を伏せさせていただいておりましたが、ご要望があればフルネーム公開も可能です。
我々は「改善力」が強みだと思っていますので、他にも何か気になったことがありましたらぜひ忌憚なくご意見をいただけるとありがたいです。

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「患者さんがどう生きたいか」にスタッフ全員で
寄り添い続けるためにも、当直連携基盤のサポートは必要
中尾 :
最後に、青葉アーバンクリニック様の今後の展望などについてお伺いできますでしょうか。
飯塚:
基本的には受け入れ機関なので、厚労省が目指すところに沿っていくというところなのかなとは思いますが、クリニックについては「かかりつけ医機能の強化」というミッションが与えられているので、そちらに向けて推進している段階です。
かかりつけ医機能というのは、健康なときから定期的に主治医の元に行って、健康状態について相談しながら自立した生活を続けられるようにしたり、もしも何か困ったことがあれば主治医に相談をして専門の病院を紹介してもらったりするという関係性を地域でつくっていくということなのだと思います。
体調が悪い時にだけお医者さんにかかっても、「その人がどう生きたいのか」が医療者側からはわからないんですよね。当院でも、終末期になってから当院に来て、患者さんが本当はどうしたいのかがわからない状態になってしまっているときには毎回我々が大切にしている「患者視点の医療サービス」をどうすれば実現できるか頭を悩ませています。
ですので、健康なときから家族ぐるみで当院をご利用いただきたいですし、本当に悪くなった時にもちゃんと全面的に支援しますよ…というスタンスのクリニックでありたいです。「少しでも健康に興味のある方が気軽に立ち寄れる場所」を目指したいですね。
また、「緊急時の対応」というのもかかりつけ医にとっては必須だと思います。24時間365日いつも健康だった人が、急に…というときにはいつでも連絡できますよ、という体制を整えていきたいです。
24時間対応の部分に関しては、今後も当直連携基盤さんにもご協力いただいて対応していけたらと思っています。
榊原:
訪問診療に関しては、SDGsの時代ですから、「かかりつけ医の役割も含め、健康的かつ持続的にサポートして行かなければならない」というフェーズがすでに訪れていると思います。
スタッフとコミュニケーションを取り、みんなで会話をした上で患者さん1人ひとりに寄り添った方針を決めてやっていきましょう、というのが当院のスタンスであることには今後も変わりはありません。それぞれの意見をなるべく潰さずに、多様性を持った形でやっていこうとしています。
ただ、そうは言っても、夜に主治医が呼ばれてしまったりすれば主治医はやっぱり潰れてしまうわけですよね。そういった意味で、いつでも質の高い医療サービスを提供できるようにするには、日中は日中の先生が頑張って、夜はしっかり休息をとって、オフの時間を大切にしてほしい。そのために、今後も当直連携基盤さんにサポートをお願いをしたいです。
一番重要なのは、今まで診てきた患者さんにとって不利益にならない形で、適切な診療や精神的ケアを大切にしてくれているかどうか。
そういうことを大事にしている当クリニックにとって、当直連携基盤さんはニーズとマッチしていましたし、利用している現在も、ちゃんと信頼のおけるサービスであると思っているから安心してお任せができています。
中尾:
ありがとうございます。今後もどうぞよろしくお願いします。
