医療法人島田クリニック クローバークリニック シンプルに診療の質を高めることが、患者さんにもクリニックにとっても最善
【医療機関名】医療法人島田クリニック クローバークリニック
【所在地】〒536-0014 大阪市城東区鴫野西4-1-33ウェルフェア大阪京橋ビル1階
【代表者】医療法人島田クリニック 理事長 島田英徳
大阪府大阪市にあるクローバークリニックは、大阪府池田市に本院を置く医療法人島田クリニックの分院として在宅医療を行う診療所だ。
島田クリニックは、各診療所から半径16kmの範囲を訪問エリアとする地元密着型の診療所で、科学的根拠を重視した質の高い医療を提供している。
今回インタビューさせていただいたのは、その島田クリニックで理事長を務める島田英徳先生だ。
医療における「質の高さ」とは何なのか、質を追求する中で当直連携基盤のサービスがどう映るのか、そしてこの先の展望について、詳しくお話を伺った。
医療法人島田クリニック 理事長 島田 英徳(シマダヒデノリ)
徳島県生まれ。徳島大学医学部卒。初期研修修了後、ECFMG(米国医師資格)を取得。米国ワシントン大学一般外科サブインターンを経て、京都大学大学院医学研究科に入学。iPS細胞及び人工臓器の研究に従事。京都大学iPS細胞研究所研究員を経て島田クリニックを開業。
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左:島田クリニック・島田理事長、右:当直連携基盤・中尾
身近でも、社会情勢的にも、
外来医として感じた在宅医療へのニーズの高まり
当直連携基盤・代表取締役 中尾(以下、中尾) :
はじめに、島田先生が在宅医療の診療所を始められた経緯についてお聞かせいただけますか?
医療法人島田クリニック 島田理事長(以下、島田) :
もともと僕は、なかつかさクリニックという島田クリニックの前身のクリニックで内科・小児科医をやっていたんですが、外来のみだったんです。
クリニックを続けていくうちに、それまで歩いて来られていた患者さんがなかなか来られなくなって、午前と午後の間の時間にご自宅に訪問して診療するということが次第に増えていきました。場合によっては重症度が上がって24時間対応が必要なケースも出てくるんです。
当時は一人でやっていたので限界があって、どうしようもない時は他の訪問診療のクリニックさんを紹介したりしていたのですが、本心としては僕自身自分の患者さんは自分で最後まで診たいし、患者さんからもずっと診てほしいという要望はありました。
中尾 :
そういうところから、在宅医療の道を考え始めたんですね。
島田 :
そうなんです。やはり在宅医療は地域医療を担っていくうえでも必要だし、人口構造の変化を考慮すれば、クリニックの経営的にもいつかは本格的にやらなければいけないと思うようになっていきました。
ただ、日々の外来診療だけでも忙しくて、なかなか新規事業として形にする余裕がありませんでした。
そんな最中に、訪問診療を専門としていたこのクローバークリニックの継承のお話をいただきました。継承ならドクターや看護師を含めたスタッフの方にも引き続き働いてもらえるし、すぐに訪問診療に参入できるからということで、2019年に始めることになったんです。
診療についてはそれまでのやり方を踏襲しつつ、僕たちなりにうまくまわるようにアップデートして今の形があります。当時から患者さんの数も倍以上になっているので、結果は出ているのかなと感じていますね。
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患者さんのリスクに先回りして対処。
質の高い医療が、全員にとってベストになる
中尾 :
先ほど、重症度の高い患者さんも出てきたというお話がありましたが、そういう患者さんを受けるにあたって医学管理の面で特に心がけているのはどんなことですか?
島田 :
一般的な慢性疾患に関しては、まず先を見据えた管理計画を立てるということですね。
病状の急変するケースで多いのは呼吸器や循環器の問題なんですけど、例えば脳梗塞の既往があるとか、心不全や心筋梗塞などのリスクファクターが明らかな人に対しては、その人に応じたメニューというものがあります。
こういうことに対してきちんと先回りして手を打って、長期的な視点で管理をすれば、実は容体が急変することってあまりないんですよ。
急変率というのは、同じ患者さんでもやり方次第でけっこうばらつきが出るものだと思っています。
中尾 :
その時その時の状況を点ではなく線で見ることで、リスクを見逃さないということですね。
島田 :
そうですね。
例えば体重が増えたという現象ひとつとっても、点でしか見ていないとただ「太りましたね」ということしか気付けません。そうではなくて、その人が心不全を抱えていたら、水が溜まって体重が増えている可能性があるんですよ。心不全が進行して危ない状態になってしまっているかもしれない。
そして、それがきちんとわかっていれば、心不全が悪化したら「念のために体重を測りましょう」となりますよね。体重が増えていないなら、次は薬を見直してみたり。
そういうふうに、患者さんごとに抱えているリスクを最小化するような診療をしていくことで、医学管理の質の高さを担保していきたいと思っています。
中尾 :
そういった部分を、クリニック全体で共有しながら運営されているんですね。
島田 :
患者さんが健康寿命を最大化できるように、服薬にしても生活習慣の改善にしても全体を見て考えるようにしているし、当院の職員にも指導しています。
それがもちろん患者さんのためになるし、おろそかにすれば結果的に私たちクリニックの経営にとってもマイナスになるわけですよ。
だから、目の前にある仕事に対してシンプルに質の高い診療を提供することが、結局は患者さんにとっても私たちにとっても一番なんです。
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夜間でも、トレーニングされた人材による
高いクオリティの医療を提供したいから
中尾 :
続いて、当社のサービスについてお聞きします。当直連携基盤を導入いただくことにした決め手はどんな点だったのでしょうか?
島田 :
夜間対応にはやはり担当者によってやり方もクオリティもバラバラな部分があって、報告もシステマティックにできていなかったり、属人化している要素もあったりという課題があったんです。
できるだけ、きちんとトレーニングされた人にある程度のクオリティでやってもらいたいとは思っていたんですけど、やはり夜間の人材まで自前でトレーニングするのは大変ですからね。
それに看護師さんや事務職員さんにとっても、平日の夜間や土日祝日は皆さん負担に感じられるので、職員への負担を軽減したいというのもありました。
そういう時間帯の仕事がなければ採用面でもプラスに働くし、既存職員のリテンションにもつながるし、色々な面でメリットがあります。
中尾 :
その反面、導入への不安もあったのではないでしょうか?
島田 :
一抹の不安はもちろんありました。
外部の方に入ってもらうということは、お互いに知らない状態で管理することになるので、僕たちの求めることに応えてもらえるか、と。仮に何か問題が起これば、患者さんにも迷惑をかけるし、当クリニックにとっても患者さんが離れていく要因になり得ます。
ただ、すでに東京で多くの患者さんを担当されている実績があったので、しっかりお仕事されているのだろうということで、お願いしてみることにしました。
いざ蓋を開けてみると、現場からは「土日の対応が手厚くなってよかった」という声が出てきました。
やっぱり、実際に24時間対応でドクターが直接来てくれるというのは大きいですよ。患者さんにとっても、医療機関や施設にとっても。
自分たちで非常勤の先生を探してお願いすると、どうしても中にはあまり現場に行きたがらない先生もいらっしゃるので、その点はとても助かります。
中尾 :
そうおっしゃっていただけると、私としてもありがたいです。
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テクノロジーを取り入れて、
これからを見据えた在宅医療を提供していきたい
中尾 :
最後に、島田クリニック様としての今後の展望についてお聞きできますか?
島田 :
次は、専門性の高い訪問診療をやっていこうと思っています。大きく分けると、循環器系の病気とがん治療ですね。
まず、僕はもともと循環器系の分野に興味があったんです。
循環器系の重症度の高い患者さんで、今までは入院しなきゃいけなかったケースでも、今の時代なら色々な機械を活用して家を一時的に病院化して、Zoomなどで遠隔でやれることがあるんです。
がんについても、今は様々なテクノロジーが進歩していて、在宅でできる治療も色々出てきました。
そういうものを積極的に取り入れて、高度な訪問診療をやっていきたいです。
中尾 :
なるほど。時代のニーズにもマッチしそうですね。
島田 :
そうですね。
これからは高齢者がますます増えていくし、死亡率が高いのも心臓病やがんなので、患者さんからのニーズも必ず増えていくでしょう。
僕自身、機械を扱うことも好きで、テクノロジーを取り入れやすい循環器やがんの分野は相性がいいと思っているんです。
経営的に考えても、得意分野を突き詰めたり新しい技術を取り入れることで差別化ができるし、それで付加価値を生むことが患者さんのためにもなる、と考えています。
ただ、実現するためにはそれを見据えた体制を少しずつ作り上げる必要があって、そのひとつがこのクローバークリニックなんです。
そうやって拠点を作りながら生産性を高めていって、これからの時代を見据えた次世代的な組織を作っていけたらと思いますね。
中尾 :
おっしゃるような体制づくり、組織づくりについて、どんな見通しをされていますか?
島田 :
実は、そういうことをやっていくうえで、この辺りは地域的にはとても恵まれているんです。
ここは全国的なバリューの高い大阪大学病院が近いので、日本中から優秀な人材が集まりますし、国立循環器病研究センターもある、特殊な地域だと言えます。
本当はそういう人材を活かして、例えば阪大病院を退院したけど急変するリスクのある患者さんを、在宅で診る体制をとれれば良いと思うんですよ。患者さんにとっても、地域にとってもそうだし、ドクターにとっても自分の専門性をより活かせますよね。
でも、現状はまだそういった体制が整っていないんです。せっかく循環器などで良い先生がいても、専門とは関係のないアルバイトをやっていたりする。
その人的リソースをもっと活かせるようになれば地域的な価値も上がるので、僕としては大学病院や地域を巻き込んで取り組んでいけたら、という思いがあるんですよ。
例えば当直連携基盤さんでも、そういう専門性の高いドクターを扱うサービスを始めてもらえると、一緒に色々できるかもしれませんね。
中尾 :
今後の展望、深く考えていらっしゃるのですね。私たちのサービスにも大いに参考になります。
本日は、貴重なお話をありがとうございました。