医療法人社団貞栄会 患者の不安を取り除く医療を提供できるのは、診療アシスタントの存在があってこそ
【医療機関名】医療法人社団 貞栄会
【所在地】
静岡本部 〒422-8041 静岡県静岡市駿河区中田4丁目6−1
東京本部〒108-0073 東京都港区三田1-2-18 TTD PLAZA 7階A1号
【代表者】理事長 内田 貞輔
【ホームページ】https://teieikai.com/
患者が誇りと尊厳のあふれる人生を全うし、ご家族が命を受け継ぐ一助となりたいと考え、診療を行っている医療機関が「医療法人社団 貞栄会」だ。
2015年に静岡で「静岡ホームクリニック」を開院したことを皮切りに、東京・千葉・愛知にクリニックを展開しており、いずれのクリニックも24時間・365日体制での在宅医療を提供している。
貞栄会は内科・外科・皮膚科・耳鼻科など専門領域に特化した診療を患者の自宅で行う「動く総合病院」を実現すべく活動しており、それぞれの専門領域をもつ専門家が在籍している点が特長だ。
理事長の内田 貞輔先生が当直連携基盤を知った経緯やどのようにご活用いただいているかについて、お話を聞いた。
理事長 内田 貞輔(ウチダテイスケ)
栃木県生まれ。医学博士。聖マリアンナ医科大学卒業後、同大学内科学助教。2015年に32歳の若さで静岡市に静岡ホームクリニックを開院。2016年には医療法人社団貞栄会を設立し、同法人理事長に就任。2019年に三田在宅診療クリニック(東京都港区)、千葉在宅診療クリニック(千葉市)、2022年にはなるみ在宅診療クリニック(名古屋市緑区)を開院。“動く総合病院”という独自のコンセプトを掲げ、看取りを重視した質の高い医療の提供に力を注ぎ、在宅医療の底上げや普及活動にも精力的に取り組む。
【専門医資格】※2023年3月現在
日本在宅医療連合学会 評議員・在宅専門医・指導医
日本プライマリ・ケア連合学会 認定医・指導医
日本リウマチ学会 リウマチ専門医・指導医
日本アレルギー学会 アレルギー専門医
日本内科学会 総合内科専門医
日本緩和医療学会 緩和医療認定医
日本抗加齢医学会 専門医
難病指定医師
肢体不自由児指定医師

左:当直連携基盤・中尾 右:医療法人社団 貞栄会・内田理事長
祖父母や地域のお年寄りにお世話になった過去があった
当直連携基盤 代表取締役 中尾(以下、中尾) :
まず、内田先生が在宅医療クリニックを開業しようと思われた経緯を伺ってもよろしいでしょうか?
医療法人社団 貞栄会 内田理事長(以下、内田):
僕が在宅医療に出会ったのは研修医の頃でした。リウマチ内科の医局に入ったのですが、そこでの非常勤がたまたま訪問診療だったんです。
当時、医局はリウマチ内科だとステロイドや免疫抑制剤を扱っていて、ちょっと難しい病気の患者さんもいらっしゃったので、病院から在宅に行くとか、病院で亡くなる前にどこかに出そうみたいな流れができ始めた時期だったんです。
そうすると、なかなか出先がないというのもあって、患者さんを退院させたり家に帰して、僕たちがそのまま訪問に行く…というのが結構確立していました。
なので、昼間は普通に大学病院で働きつつ、自分の患者さんが退院して在宅に行った場合は続けて自分が診療するみたいな環境が、僕の大学生活でした。
当直も、その流れで比較的多くやってきていました。
中尾 :
リウマチ内科の医師が在宅医療に携わるケースは多いのでしょうか?
内田 :
「何でリウマチ内科の先生が在宅で訪問診療をされているんですか?」というのはよく聞かれましたね。
そもそも、今、一貫した流れのキャリアプランの中で在宅で開業する先生が実は結構少ないなと思っていて。
僕自身は元々そういう環境にいたから、自分が開業するときには必然的にはリウマチ内科ベースか、在宅ベースかという感じでした。
それと、もうひとつ在宅医療の道を選んだ理由があって。僕、すごい田舎育ちなんですよ。人口1万人もいないような街で生まれ育ったんです。
中尾 :
ご出身は貞栄会の本部がある静岡なのですか?
内田 :
栃木です。今は佐野市に合併されたのですが、合併前は葛生町という町でした。そこの生まれなので、自宅周辺は全員顔見知りで、おかずもご近所さんからお裾分けをいただくような環境でした。
両親が共働きだったので、塾に連れて行ってもらうのも、自分の祖父母だけじゃなくて、近所の方がやってくれたりとかしていたんです。
だからこそ、おじいちゃん・おばあちゃんというのは元々僕の生活の中に常にいる存在だったし、訪問診療に入るときもさまざまな環境の家に入ったりすることに特に抵抗感もなかったんです。
中尾 :
ご両親は医師ではなかったのでしょうか?
内田 :
はい、2人とも医師ではなかったんです。だからこそ、在宅医療の道にすんなり入れたというのもあるかもしれませんね。
僕は元々開業医を目指していたので、開業するならリウマチと在宅のクリニックにしたいと早い段階から考えていました。
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在宅医療に欠かせない「コミュニケーション能力」を
育むことのできる医療機関を目指す
中尾 :
静岡にクリニックを開院されたのは、どういったご縁からだったのでしょうか?
内田 :
共通の趣味を持っている友人からの紹介でした。開業を考えていたときに、「静岡にこういう物件があるよ!ここで開業したらどう?」と声をかけてもらったのがたまたま静岡だったんです。
中尾 :
すごいフットワークの軽さですね!そのタイミングで引っ越して居を構えたのですか?
内田 :
そうですね。開業を機に転居して、2015年4月に静岡ホームクリニックを開院しました。その後、東京、千葉、愛知でも在宅医療クリニックを始めました。
中尾 :
私がすごく珍しいなと感じたのは、各クリニックの地域が離れているという点です。こちらに関しては、どんな理由があったのでしょうか?
内田 :
静岡に開業したときと同じように、たまたまご縁があったというのが理由です。東京・千葉に関しては、元々は介護会社の方から連携のため来てほしいというお話をいただいたことがきっかけでした。
愛知については、静岡に本社がある企業からオファーをいただいて、今もしっかり連携しています。
普通に戦略的に展開しようと考えたら、静岡市の隣の焼津市や富士市でやるというのがきっと定石なのかもしれませんね。
中尾 :
今後はどのような展開を想定されているのでしょうか?
内田 :
現在はありがたいことにグループ全体で約2,000人の患者さんを診させていただいているのですが、それはきっと地域からの信頼の現れなのかなと感じます。今後もさらに信頼を積み重ねていき、3,000人の患者さんを受け入れられる体制強化をしていきたいと考えています。
また、他のクリニックとの差別化を図るという観点では、当グループは医師の「教育」に力を注いでいる医療機関を目指していきたいですね。
具体的な取り組みとしては、僕と他の医師との「2人体制での同行」を一定期間徹底的にやろうと考えています。なぜかというと、在宅医療って「医療行為」そのものは訪問先でやるべきことの2-3割程度で、残りはすべて「コミュニケーション」だと思っているからです。
医師の方々は、専門知識や技術を身につけるために学力に多くの時間と労力を注いできたことや診断治療学を身につけることが優先されることもあり、患者さんやそのご家族とコミュニケーションをとる経験が乏しい場合があります。
また、若手の先生方は、病院医療のその先の在宅患者さんとの診療経験、人生の先輩である方々との対話経験、医療のガイドラインだけでは判断が難しい自宅環境での診察判断・経験が十分でないこともあります。
そこで、私や静岡院長の松本先生を始めとした在宅医療経験豊富な当法人の常勤医師のサポートが役立ちます。診察同行によるフォローと育成、場面別の経験を始め、YouTube動画や勉強会を通じた自学の機会を提供することで、これらの課題を補完していくことができると考えております。
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患者さんの不安を取り除く鍵を握っているのが
「診療アシスタント」
中尾 :
ここからは当社のことについてお話を聞かせてください。
当社を知っていただいたきっかけを教えていただけますか?
内田 :
知り合いの先生から紹介していただいて、中尾くんとお話する機会をもらったのが始まりですよね。
中尾 :
そうでしたね。初めてお会いしてから約1年後に連携させていただくことになったと記憶しているのですが、当社のサービスの導入を決断されるまでにどういった懸念点があったのでしょうか?
内田 :
一度中尾くんと顔を合わせていたこともあって、懸念点は圧倒的に少なかったと思いますよ。
元々静岡や東京で自分達だけで24時間365日体制の地域医療を提供してきた経験を踏まえて、連携にあたってどんなトラブルが起こり得るか、こういうケースの場合はどのように対応されるのかなど、最初の段階で聞いておきたかったことはクリアできていたので。
僕の質問に対する中尾くんの回答に納得がいかなかったら頼まなかったと思います。
中尾 :
ありがとうございます。連携を開始させていただいてから、当社のサービスに関してどんな印象を抱かれたかお聞かせください。
内田 :
正直なところ、はじめの頃は研修医上がりの経験の浅い先生ばかりだと不安だなと思っていたのですが、実際は医師をサポートする「診療アシスタント」や診療後のレポート報告の質がしっかりしているなと感じましたね。
当院がこれまで順調に事業拡大をしてこられた理由が、医師はもちろんのことナースがすごく優秀なんですよ。各クリニックにスーパーナースが在籍してくれているのが非常に大きくて。
医師を上手にナビゲートしたり、医師と協力し合って医療を提供するということで在宅診療の質が格段に上がるというのを身を持って実感していたので、ただ単に夜間や休日に医師1人だけが来るのではなく、訪問診療に特化したアシスタントがちゃんと付いてくれるという当直連携基盤の仕組みであれば、これからも上手く活用していけると感じました。
中尾 :
当社の診療アシスタントに対してご評価いただきありがとうございます。診療アシスタントの教育に関しては、とりわけ力を入れています。
内田 :
他社のサービスによっては、ドライバーさんと先生だけで患者さんのところへ行くというのもありますよね。それだと、僕はちょっと心配だなと思っていたんです。
コミュニケーションが得意な医師であればいいと思うのですが、全然しゃべらないタイプの医師もたくさんいます。後者の先生の場合だと、患者さんの不安が取り除けないですよね。
特に、夜間は不安な気持ちが強くて連絡をもらっているわけですから。
たとえ医療的に正しいことをしていたとしても、話し方や接し方によっては患者さんの満足のいく医療を提供できたとはいえません。
だからこそ、「もしも医師のコミュニケーションが不十分だったら君たちがサポートをするんだよ」と看護師のみなさんには教育しているんです。
当直連携基盤さんの診療アシスタントも、きっとそういう役割をちゃんと理解した上で担ってくれているのだろうなと思っています。
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『ポイントを的確に捉えた診療』と
『医師と診療アシスタントの2名体制』が、
トラブル回避に繋がった
中尾 :
当社が対応させていただいた中で、特にご満足いただけた事例があればお聞かせください。
内田 :
ちょうど最近、すごくいい例がありました。
千葉のクリニックが連携している老人ホームから休日にオンコールがあって、「入居者の方が日中に転倒して痛みを感じている。
大腿骨頸部骨折かもしれない」とのことで当直連携基盤さんに訪問をお願いしたんです。
その日は結局骨折ではないということで病院に搬送せず、週明けにもう1回痛みが続いていると連絡をいただいて、そのタイミングで搬送をさせていただくことになりました。
この一連の過程に関して、私がカルテを診る限り特に問題には感じなかったのですが、その施設の一番上の管理職の方がたまたま医師で「骨折の疑いがあるなら緊急疾患では?なぜ日曜日のうちに緊急搬送をしなかったんだ」というご意見をいただいたんです。
こういった意見をいただいた場合、もし仮に医師一人で診療に行っていたら情報がブラックボックス化してしまっていたと思うのですが、同行していた診療アシスタントさんに当時の状況を聞くことができたことで、トラブルを回避することができました。
中尾 :
そうだったのですね。具体的にはどういった状況だったのでしょうか。
内田 :
その時に診療を担当した医師と診療アシスタントさんに改めて確認をしたところ、ちゃんと搬送の可否について施設に相談してくれていて、さらにご家族にも状況を連絡してくれて、その上で施設で1日様子をみようという結論に至っていたことがわかりました。
鍵を握っている登場人物である家族・施設と話し合った上での判断であって、こちらだけの一方的な判断でやったわけではないということが施設の上の方にも説明がついて、「その流れであれば妥当な判断ですね」と納得していただくことができました。
この事例のように、ちゃんとポイントを掴んで手順を踏んだ医療を提供してくれていることを聞くと、改めてすごく助かるなと感じます。
当直連携基盤さんとのお付き合いが始まって2年近く経ちますが、ちゃんとPDCAを回してくれていることでお取引当初よりもさらに質が上がっていると思っています。
中尾 :
当社のこだわっているところに気づいていただいてありがとうございます。
社員にもフィードバックさせていただきます。
本日はお時間をいただきありがとうございました。